“かゆみ”が止まらない人へ。実は◯◯が原因かも?
今回は、「なんだかずっとかゆい…」「薬を塗ってるのによくならない」そんな“止まらないかゆみ”についてお話しします。「乾燥してるからかな?」「ちょっとした湿疹かな?」そう思って、保湿したり市販薬を塗ったりしているのに、なぜかスッキリしない。夜になるとムズムズして眠れなかったり、つい掻いてしまって肌が赤くなったり。そんな経験、ありませんか?実は、かゆみの原因はひとつじゃないんです。乾燥やアレルギーだけではなく、ストレス・汗・衣類・カビ・ホルモンバランスの乱れなど、日常生活の中に思わぬ“落とし穴”が隠れていることがあります。そして、自分で「たぶんこれだろう」と思い込んで間違ったケアを続けてしまうと、かえって悪化したり、長引いてしまうケースも少なくありません。
今回のブログでは、
✔️ かゆみがなかなか治らない人の特徴
✔️ 見落としやすい意外な原因6つ
✔️ 今日からできるケアのコツ
✔️ 皮膚科を受診すべきタイミング
について、皮膚科医の視点からわかりやすく解説していきます。長年のかゆみに悩んでいる方も、最近なんとなく気になっている方も、「自分のかゆみはどこから来ているのか?」を一緒に見直すきっかけになれば嬉しいです。ぜひ最後までご覧ください。
以下のブログの内容はこちらのYouTubeでも解説しています。よろしければあわせてごらんください
1.かゆみが“治らない人”に多い共通点
まず、「かゆみが治らない…」という方に共通するポイントをいくつかご紹介します。・乾燥しているはずなのに、保湿してもかゆい・夜、布団に入ってから特にかゆみが強くなる・市販薬やかゆみ止めが効かない・掻いてしまい、肌が赤くなったり湿疹ができてしまうなど、こうした場合、原因が1つではなく、いくつかの要素が絡み合っていることが多いです。特に30代以降になると、肌のバリア機能が少しずつ低下し、かゆみの原因が複雑になりがちです。「いつものことだから」と放っておかずに、“なぜかゆくなるのか”を立ち止まって考えることが大切です。
2.実はこれが原因かも?意外な原因ベスト6
ではここからは、見落としがちな“かゆみの原因”を6つご紹介します。
【原因①】乾燥じゃなくて“汗”が原因?
「かゆい」と聞くと、多くの方がまず「乾燥しているからかな?」と思い浮かべるのではないでしょうか。確かに乾燥はかゆみの大きな原因のひとつですが、実はそれだけではありません。意外と多いのが“汗”によるかゆみです。汗そのものは悪いものではなく、体温を調整したり、老廃物を排出したりする大切な働きがあります。でも、汗に含まれる塩分やアンモニア、乳酸などの成分が肌に残ったままになると、それが刺激物となって肌をかゆくしてしまうんです。特に、次のような場所は要注意です。まずは背中や胸元です。原因はインナーで蒸れやすい事があります。次はウエストまわりです。これはベルトやパンツの締めつけによるこすれや蒸れが原因です。他は太ももや膝裏。これは擦れと汗の刺激が重なりやすいからです。こうした部位では、汗をしっかり拭き取ったり、吸湿性・通気性のよい衣類を選ぶことがとても大切です。他は見落とされがちなのが、「汗をかいた後の放置」です。運動後や外出後にそのままにしておくと、雑菌が繁殖しやすくなり、毛穴の炎症や湿疹の原因にもなります。なので、汗をかいたら、できるだけ早めに拭き取るもしくは洗い流す、こまめに着替えをする、綿や麻などの通気性のよい素材を選ぶ、汗をかく前に制汗剤や吸汗インナーを使うのも効果的です。
【原因②】衣類・寝具の摩擦や刺激。
意外と見落とされがちなのが、肌に直接触れている“衣類”や“寝具”の素材や構造”が、かゆみの原因になっているケースです。毎日身につける服や、長時間触れているシーツや毛布。これらが少しずつ肌に刺激を与え続け、じわじわと“原因不明のかゆみ”を引き起こしていることがあるんです。特に、次のような素材や状況には注意が必要です。ウールやポリエステルなどの化学繊維の下着やパジャマ、肌にフィットしすぎる締めつけの強いインナーやナイトウェア、ゴワついたシーツ、毛玉ができたブランケット、洗濯しても固くなったタオル柔軟剤や洗剤の香料・防臭成分・抗菌剤が肌に合っていない場合などです。これらの刺激は、最初は何も感じないのですが、長時間・毎日のように接触していると、肌のバリア機能にダメージを与えてしまうことがあります。特に、30代以降になると皮膚の水分量が低下しやすく、ちょっとした摩擦でもかゆみを感じやすくなります。そしてもう一つ、重要なのが“寝ているときの摩擦”です。寝返りのたびにパジャマとシーツが擦れ合ったり、背中や腰、肩に圧迫がかかることで、知らないうちに肌がこすれてしまうことも。その結果、起きる頃にはかゆみが出ていたり、朝方にムズムズする…といった現象が起こるのです。
【原因③】皮膚真菌症(カビ)
「赤くなってるけどジュクジュクしてないし、かゆみもないし大丈夫かな…」そんなふうに考えてしまって、つい見過ごされやすいのが、皮膚にできる“カビ”=皮膚真菌症です。カビと聞くと「水虫」や「ジメジメした足の病気」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。ですが実は、足だけでなく体や顔、首、わき、股、背中など、全身のどこにでもできる可能性があります。湿気がこもりやすい部位に真菌が繁殖しやすくなることがあるんです。代表的な皮膚真菌症には、次のようなものがあります:白癬症の代表である足白癬。これは名前のように足の指の間やかかと、足の裏にできます。かゆみがないタイプもあります。たむしと言われる事もある体部白癬。これは体や腕、脚などにリング状の赤みがでます。次はいんきんたむしともよばれる股部白癬。これは股やお尻のまわりに出やすく、男性に多いです。他にはカンジダ性皮膚炎。カンジタは白癬とは違った種類の真菌で、粘膜の常在菌でもあります。そのカンジタが増えると皮膚炎を引き起こします。皮膚のしわやくぼみに湿った赤みが出てきます。女性の胸の下やわきの下などにもでます。これらの真菌症は、「見た目がニキビや湿疹と似ていること」もあり、誤ってステロイド外用薬などを使ってしまうと、かえって悪化することがあります。また、自己判断で市販薬を使っても、真菌に効かない成分では治らないため、いつまでもかゆみが続いてしまうのです。皮膚真菌症を疑うサインは①薄く赤くて、少しだけ皮がむけている②丸く広がるような赤みや、輪っかのような形がある③足や股など、湿気がこもりやすい場所で長引くかゆみ④市販薬を塗っても治らない・かえって広がっているなどです。こうした症状がある場合は、顕微鏡での真菌検査を行えばすぐに診断がつきます。以前にもお話ししたように、真菌検査はとても簡単で、保険がきくので安い費用ででき、しかも結果も5分くらいででます。市販薬や自己流のケアで対処し続けるよりも、皮膚科で適切な診断と抗真菌薬の処方を受けることが、最も早く治る近道です。日常の中では「あせもかな?」「乾燥かな?」と軽く見てしまいやすい皮膚真菌症。でも放っておくと、広がったり再発を繰り返したりしてしまうので、早めの対応が大切です。真菌症については、私の本にも書いてありますので、参考にしてください。
【原因④】「食べ物」が関係していることもあります。
「かゆみと食べ物って関係あるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、実は意外と関係があることもあります。特定の食品が、かゆみを引き起こす引き金になっていることがあるんです。たとえば次のような食べ物は、体内で炎症反応を起こしたり、ヒスタミンと呼ばれるかゆみを強く感じさせる物質を増やしてしまうことがあります。1,アルコール。特に赤ワインやビール。2,唐辛子、カレーなどの香辛料の強い食事3、チョコレートやナッツ類4、添加物や保存料が多い加工食品やインスタント食品5,油の多い揚げ物やスナック菓子などがあげられます。また、食物アレルギーとまではいかなくても、「食べた翌日にかゆくなる気がする」「特定の食事のあとに決まって肌がムズムズする」と感じている方も少なくありません。体の中の炎症反応は、肌に出るのに数時間〜1日以上のタイムラグがあることもあるため、気づきにくいのが特徴です。・食後や飲酒後に、特定の部位だけかゆくなる
・肌荒れや湿疹の悪化が食生活の乱れと連動している気がする・油ものや甘いものを食べた翌日に、なんとなくムズムズするという場合は、一度食事の内容を記録してみる「食事日記」をつけるのがおすすめです。
自分では気づいていなかった“隠れた原因”が浮かび上がることもあります。もちろんすべてのかゆみが食べ物由来というわけではありませんが、慢性的にかゆみが続いている方や、市販薬が効かない方は、「内側からの刺激」にもぜひ目を向けてみてください。
【原因⑤】実は“無意識に掻いてしまっている”
「気づいたら掻いていた…」そんな経験、ありませんか?実は、かゆみが長引いている人の多くが、無意識のうちに肌を掻いてしまっていることがあります。しかも、掻いているつもりがなくても、寝ている間に腕や足をこすったり、
服の中で手を動かしてかいていたりすることもあるため、本人も気づきにくいのです。掻くという行動は、一時的にかゆみを紛らわせる効果があります。でもその一方で、皮膚の表面を傷つけ、炎症を引き起こし、さらにかゆみが増すという「かゆみの悪循環」を作り出してしまうんです。特に、ストレスを感じているときや考えごとをしているときに、無意識に肌を触るクセが出やすいという研究報告もあります。つまり、「心が落ち着かないときほど、かゆみに敏感になりやすい」ということですね。起きたとき、シーツにかさぶたや血がついている。掻いた覚えがないのに、腕や足にひっかき傷がある。日中、つい同じ場所を触ったり、さすってしまっている。こうした場合は、「かゆみそのもの」よりも、「掻いてしまう行動」を減らすことが優先されることもあります。対策としては、①寝る前に保湿をしっかり行い、肌を整えておく②爪は短く切り、角をなめらかに整えておく③寝るときに手袋をつける④掻きそうな場所に冷却材や冷たいタオルをあてて紛らわせる⑤日中はガーゼやサポーターで覆って掻きづらくするなどがあります。「掻かないこと」は意識だけでは難しい場合が多いので、“掻けない環境をつくる”ことがとても効果的です。かゆみの原因がわからないときほど、この“無意識の掻きグセ”に目を向けてみてください。思わぬところに改善のヒントが隠れているかもしれません。
【原因⑥】腎臓の異常や甲状腺機能異常などの内蔵疾患
「肌に何も異常はないのに、なぜか全身がかゆい…」そんなとき、実は皮膚ではなく“体の内側”に原因があるケースもあります。皮膚に発疹がなくかゆみがある場合は、血液検査で内蔵の病気がないか検査する場合があります。長引くかゆみがあり、皮膚に原因が見当たらない場合、「もしかして内臓から来てるのかも?」と視点を広げてみると、思わぬ改善につながることがあります。
3.皮膚科医がすすめる日常ケア・対策
では、かゆみを予防・改善するために、今日からできるケアをご紹介します。乾燥によるかゆみがある人は、保湿が不十分なケースが多いです。「なんとなく塗っている」だけでは足りません。入浴後5分以内に保湿をし、1日2回以上、肌がうるおいで“テカる”くらいを意識してみてください。特にワセリンやヘパリン類似物質、セラミド配合の保湿剤はおすすめです。あとはお風呂でやりがちなNG習慣として、①熱すぎるお湯で長湯する②ナイロンタオルでゴシゴシ洗う③ボディソープをたくさん使うこれらは肌のバリア機能を壊してかゆみを悪化させます。私の本にも書いてありますが、乾燥肌の人はぬるめのお湯で、ワキ、マタ、足を部分的に手のひらで優しく洗うのがベストです。他には掻かない工夫も大事です。掻いてしまうと、皮膚が傷つき、さらにかゆみが強くなる「かゆみの悪循環」になります。対策としては、保冷剤などで冷やす、爪を短く切る、寝るときは手袋をするなど、“掻かない仕組み”を作ることが大切です。
4.皮膚科に行くべき“かゆみ”のサイン
では、どんなときに皮膚科を受診すべきでしょうか?
✔️ 1週間以上かゆみが続いている
✔️ 掻きこわして肌が赤くなっている
✔️ 夜間にかゆくて眠れない
✔️ 市販薬を使っても改善しないなど、こういった場合は、皮膚科での診察が必要です。症状に合った外用薬や内服薬を使うことで、スピーディーに改善できるケースもあります。我慢せずに早めの受診をおすすめします。












